東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1586号 判決
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【判旨】
二控訴人の同被控訴人に対する本訴請求は、自賠法一六条に基づく損害賠償請求であると解せられるところ(控訴人は本訴において、損害賠償請求とは別に主位的に保険金の支払を求めるものである旨主張しているが、いわゆる被害者の直接請求は、保険金額の限度で損害賠償請求を認めたにすぎず、右損害賠償請求とは別個に保険金請求を認めたものではないから、本訴請求を保険金請求として構成することは出来ない。なお松本調査事務所の認定、支払通知等によつて、控訴人の右被控訴人に対する保険金請求権が発生するものでないことも、いうまでもない。)、同請求は自動車の保有者において同法三条による損害賠償の責を負う場合にのみ成立ち得る請求であることは、自明である。
そこで、本件事故の状況について検討するに、<証拠>によると、遠藤辰男は、本件事故当日、自己の運転する自動車に控訴人を同乗させて、丸子町方面から下諏訪方面へ向け進行中、本件事故現場である男女倉口附近に差しかかつたが、同地点は丸子町方面から下諏訪方面へ向つて右へ鋭角に曲折しており(いわゆるヘアピンカーブ)、従つて対向車の確認は同地点附近にあるカーブミラーによつてなす必要があつたところ、遠藤は偶々同所バス停附近にいたトラックの動静に注意を奪われ、右ミラーによる下諏訪方面からの対向車の有無の確認を怠り、剰え、同カーブを下諏訪方面に向け右折するに当り、道路のセンターラインを超え、反対車線に嵌み出して小回りに右折したため、同車線内を下諏訪方面から進行(徐行)して来た大草敏茂運転の自動車に接触し、本件事故を惹起したもので、右大草には全く運転上の過失はなかつたことが認められ<る>。
右事実によれば、本件事故は偏に遠藤の運転上の過失によつて発生したものであり、他に事故の原因は考えられないので、大草に対して自賠法三条の保有者責任を問う余地はない。そうすると、同法一六条に基づく控訴人の本訴請求はその前提を欠くといわざるを得ない。のみならず、後述するように、本件事故によつて控訴人にその主張のような受傷、後遺症があつたとは到底認め難いので、控訴人の被控訴人同和火災に対する本訴請求は失当として排斥するほかはない。
なお、控訴人は、本件事故に関し、松本調査事務所において、大草敏茂の有責性及び損害賠償額一八一万円を認定し、控訴人に対して支払通知をした旨主張し、右事実は当事者間に争いのないところであるが、しかし原審証人中山一夫も認めているように、右調査事務所の認定、支払通知などは、法律上何ら保険会社を拘束するものではないから、右事実のみから直ちに被控訴人において本訴請求に応ずべき義務が生じると解することもできない。
(田尾桃二 内田恒久 藤浦照生)